個人再生で借金はいくらになるか
個人再生で債務整理する際の、負債額の決定方法をご紹介します。
負債額を決定する基準
個人再生は、自己破産のようにすべての借金が免除されるのではなく、様々な要因で決められた最低弁済額を今後3年間で払っていくという制度です。
負債の総額が個人再生によりいくらになるかは以下の3要因で判断されます。
- A 負債の総額基準
- B 財産基準
- C 所得基準
上記3つの基準をそれぞれ計算し、3つのうち一番大きい額まで負債が圧縮されます。
Aは、負債の総額にもよるのですが、原則5分の1になります。たとえば負債の総額が500万円ならば100万円まで負債が圧縮されます。
Bは、財産の総額です。たとえば車と保険解約返戻金等の総額が200万円あるとすると、この額がBの基準額となります。
Cは過去2年間の所得をもとに計算します。おおざっぱに言うと収入から生活費を引いて余るであろう総額です。その額が300万円とするとこれがCの基準額となります。
上記の例ではAが100万、Bが200万、Cが300万円ですので、一番大きい額であるCの300万円を今後返済していくという事になります。
このように3つの基準を使うのは財産のたくさんある人や(Bの基準)、収入等から生活に余裕のある人(Cの基準)の借金を大幅に減額するのは対債権者との関係で公平とは言えないからです。
財産や所得が少ない方はAの基準が適用され(実際はこのケースが多いです)、原則5分の1まで負債は圧縮されます。
個人再生で行われる2種類の手続き
なお、個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生という2種類の手続きがあります。
そして上記3つの基準をすべて使うのは給与所得者等再生です。小規模個人再生の場合はAとBの2つの基準しか使いません。
そのため所得が多くて余裕がある人はCの額が大きくなるので、Cの基準を計算から排除する小規模個人再生を利用した方が得という事になります。
上記の例でいえば、Cの300万円が排除されるので、返済総額はBの基準が適用され、200万円となるからです。
もっとも、小規模個人再生を利用するためには大口の債権者(51%以上)が個人再生の利用に反対していない事が必要とされていますのでもし、大口の債権者が反対しているような場合は給与所得者等再生を利用せざるえません。
A 負債の総額基準
まず最低弁済額を定めるにあたって1つ目の基準が負債の総額の一定割合です。ほとんどはこの基準により最低弁済額が定まります。その額は以下の基準で定められています。
負債の総額 | 最低弁済額 |
100万円未満 | 全額 |
100万円以上~500万円未満 | 100万円 |
500万円以上~1500万円未満 | 債務額の5分の1 |
1500万円以上~3000万円未満 | 300万円 |
3000万円以上~5000万円以下 | 債務額の10分の1 |
ベースは5分の1ですが、その額が100万円を下回る場合は、一律100万円となります。負債の総額が1500万円までは5分の1が基準となります。
実際は個人の方で住宅ローン以外の負債が1500万円以上ある方はまれですので、ほとんどのケースが5分の1で計算することになります。
B 財産基準
財産をたくさんお持ちの場合、負債が一律5分の1まで圧縮されるのは公平ではないため、お持ちの財産より負債が減るという事はありません。
例えば、借金が500万円で、その5分の1は100万円ですが、財産が200万円ある場合は、200万円までしか借金は減額されません。
財産には以下のようなものが含まれます。
- 現金
- 預貯金
- 財形貯蓄
- 退職金見込額の8分の1
- 有価証券
- 不動産の時価総額
- 自動車、二輪車等の時価
- その他高級品の時価総額 など
C 所得基準
給与所得者等再生はさらに所得基準(可処分所得)が加わります。計算が細かいので割愛しますが、要は給料から政令で定められた生活費等を引いて、どれだけ毎月お金が余るかという基準です。
この余る額(可処分所得の2年分)が多いのならば、生活に余裕があることになります。そのため、たとえAやBの基準によれば負債の総額が100万円まで圧縮されるとしても、Cの額が300万円となれば、300万円を払っていく必要があります。
どちらの手続きを選択すべきか
上記のように小規模個人再生の方がC(所得)の基準がないためお勧めです。
例外としては、大口の債権者が個人再生に反対している場合です。
小規模個人再生では、債権者の半数以上が反対するか、反対した債権者のもつ債権額が債務総額の半数を超える場合には認可されないからです。
しかし、ほとんどのケースで債権者が反対するということはありません(反対すれば債務者としては自己破産をするという事になり、債権回収額がさらに減ってしまうからです)。
そのため、小規模個人再生の手続きを選択することが実務では一般的となっています。
ただし、1社だけで51%以上の債権を持っている場合は、当該債権者一人で小規模個人再生の利用を拒む事ができる権利があります。
そのため、他の債権者の動向を待つまでもなく、決議に反対してくる可能性があり、注意が必要です。
解決事例
Aさん 40代
債権者5社 債権総額 約500万円
債権者名 | 借金額 | 個人再生認可後 | 月々の返済額 |
A社 | 100万円 | 20万円 | 5600円 |
B社 | 50万円 | 10万円 | 2800円 |
C社 | 80万円 | 16万円 | 4500円 |
D社 | 200万円 | 40万円 | 11000円 |
E社 | 70万円 | 14万円 | 3900円 |
※開始決定までの利息・遅延損害金が付加されるため、ちょうど5分の1になるわけではありません。
最長弁済期間
最長弁済期間というのは、個人再生において弁済の期限を最大でどのくらいまで延ばすことができるかという期間です。
再生計画認可の決定の確定の日から原則3年、特別の事情(※1)がある場合にのみ最長5年となっています。
※1 再生債務者の収入が少なく、最低弁済額を3年間で完済することが難しい場合など