個人再生で車は残せるか?

個人再生をする場合、現在使われている車は残すことができるのか、という点についてご説明します。

個人再生で車を残せるかの判断ポイント

1 車のローンが残っていない場合
2 車のローンが残っている場合
  ① ローン会社に名義が残っている場合
  ② ローン会社に名義が残っていない場合

3 軽自動車の場合
4 車の返納時期、返納方法
5 どうしても車が必要という場合

1 車のローンが残っていない場合

個人再生は自己破産と異なり、自己の財産を残すことができるのが原則ですので、車も同じく、処分する必要がありません。

ただし、車の購入をしてからそんなに年数がたっていない場合や、購入時の価格が高い場合は、個人再生の手続き上財産として計上しなければならない可能性があります。

個人再生には、清算価値保証原則というルールがあり、個人再生により今後債権者に返済していく最低弁済額は財産の総額を下回る事ができません。例えば借金の総額が500万円の場合、個人再生で5分の1の100万円まで借金が圧縮されるのが原則です。しかし車の時価が150万円の場合、最低弁済額は150万円となります。そのため、車の資産価値と、預貯金の額や保険の解約返戻金の額など、他の財産とあわせた財産の総額が高額となると、個人再生の手続きで支払わなければならない金額が増える可能性があります。

2 車のローンが残っている場合

① ローン会社に名義が残っている場合

ローン会社は、今後債務者(ローンを組んだ人)が個人再生等をする場合に備えて車の名義を自社の名義に残しておくことがよくあります。所有権を自社に残しておくことで、いざというときに所有権に基づいて引き揚げ、車を売却した代金から債権の回収を図ることができるからです。

個人再生の手続きを行う場合、車を残したいが故に、車のローンだけを支払い続けるということはできません。なぜならば、一部の債権者のみ支払いをすることは偏頗(へんぱ)弁済といって、債権者平等の原則に反する行為だからです。もっとも保証人がいる場合に当該保証人が支払いを継続することは差し支えありません。ご注意いただきたいのは、保証人自身が、保証人のお金で返済をする必要がある、という点です。保証人の名前で支払いをしたとしても、実質的に個人再生をされる方が返済をすると、偏頗弁済にあたると指摘される可能性があります。また、保証人がいない場合は、親族等の第三者に代わりに返済をしてもらう、ということも可能です。しかし、保証人と異なり、返済することにつき法律上の利害関係がないので、返済するためには債権者であるローン会社の同意が必要となります(民法474条2項)。

② ローン会社に名義が残っていない場合

車をローンで購入した場合で、ローンは完済していないけれど、車が個人再生を申請する方の名義になっている(=ローン会社に名義が残っていない)というケースもまれにあります。この場合、ローン会社は車を担保に取っていない単なる一般債権者にすぎないため、「1 車のローンが残っていない場合」と同様の処理になります。

3 軽自動車の場合

現金で購入した軽自動車や、すでにローンの支払いが終わっている軽自動車については、個人再生の手続きをしても手放す必要はありません。前述した普通自動車のケースと同様、車の購入をしてからそんなに年数がたっていない場合や、購入時の価格が高い場合は、個人再生の手続き上財産として計上しなければならなくなり、その結果、個人再生の手続きにおいて弁済すべき金額が増える、という可能性があります。

軽自動車でも問題となるのは、ローンが残っている場合です。ローンが残っている軽自動車については、ローンを組まれたときの契約内容により、返還の必要性が変わることになります。そのため、購入時の契約書の詳細を確認したうえで判断することとなります。

4 車の返還時期、返還方法

いくつかのパターンにわけて、個人再生をすると車を返還しなければならないかどうかをご紹介してきましたが、返還が必要となった場合、いつ、どのようにして返還することになるのかを簡単にご紹介します。

まず、当事務所に個人再生の手続きをご依頼いただくと、車のローン債権者に受任通知という通知を出します。以降、車のローンの返済はストップしていただく必要があります。

その後、受任通知を受け取った債権者から当事務所宛に「車を引き揚げたい」という連絡が入ります。連絡が入るまでの日数は、それぞれの債権者によって異なります。債権者から連絡が入りましたら、ご本人様と車の引き揚げ業者双方の予定が合う日を引き揚げ日として決め、その日に債権者に車を引き渡す、という流れになります。

引渡し場所については、基本的には車を保管しているご自宅や駐車場となるのが一般的でしょう。債権者に車を引き渡す日までに、車の中にある私物を出していただくなど、前もってご準備をしていただく必要があります。

5 どうしても車を残したい場合

個人再生をする際に、

  • お住まいの地域に十分な公共交通機関がない、あるいは本数が少ない
  • 早朝、夜間に通勤する必要があり、始発・終電では通勤できない
  • ご自身やご家族の通院などに必要

等々、個人再生をする場合でもどうしても車を残したい、と希望される方もいらっしゃいます。

すでにご説明したきたように、個人再生の手続きを行う場合でも、一定の条件を満たす場合は車を残せる可能性があります。ただ、車を保有するということは、購入代金のみならず、毎年の自動車税(軽自動車税)、自動車保険の保険料、定期的に必要となる車検代、ガソリン代等といったコストも必要となります。

いま、2台の車を所有されていて、1台はご自身、もう1台はご家族が使用されている、というような場合、これを機に車を1台にして、どうしても必要なときだけレンタカーを利用するというような選択肢もあります。本当に車が必要かどうか、また個人再生の返済をしながら自動車の維持費を払っていくことができるかどうか、慎重にご検討いただくことをおすすめいたします。

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